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わくわくドキドキ市民活動 (2008年3月)
日本のボランティア活動の転機になった。といわれる「阪神淡路大震災」が起きたのは1995年の1月17日。「人が助け合うこと」に思いを巡らすこの時期、1月19日(土)に赤羽会館で講演会が開催されました。
今月は、その講演会のレポートです。
『音楽でこの地球を守りたい』 〜庄野真代さんたちの場合〜
「飛んでイスタンブール」という歌が大ヒットしたのが30年前ですから、若い人は初めて聞く名前かもしれませんが、歌手の庄野真代さんはその後、大学生になったり自らNPOを立ち上げたりしながら現在も精力的にコンサート活動を続けている方です。今回の講演会はその活動を紹介することにより、多くの方にNPOやボランティア活動を始める契機にしてもらおうと企画されました。
開演前、ロビーでは活動の様子を紹介するパネルが展示され、募金箱なども用意されていました。会場内には歌が流れ、スクリーンではスライドショーで庄野さんや、もう一人の講師、HAL(はる)さんたちの写真が映写されています。子どもさんも含めて200名を超える聴衆が見守る中、講演会が始まりました。
庄野さんが自分の世の中の見方を変える契機となった2年間の世界旅行の話から「夢・音楽・地球」と題した講演が始まりました。ひょんなきっかけで「旅人をしよう」と考え、出発した世界旅行が、結果として2年間の「地球の素顔を見て歩く旅」になったのも自分に得られるものの多さに気づいた体験の連続からだったようです。日本に暮らしているとなかなか実感できない、環境破壊・差別・民族紛争などの現実。その下で暮らす人々やその実際の生活を目の当たりにしたこと、そこで出会った人たちとの交流にショックを受けるとともに、「人間の生き方を考えさせられた。」そして「本当にこの地球はかけがえのないものなんだ」と感じたそうです。 乗り合いバスで初めて会った自分に「ホテルは危ないからうちのゲストルームに泊まりなさい。」と勧める人。砂漠の中で、後からそこを通る人のために「みつけたのは自分だから私が汲むのはあたりまえ」と水をためる人。5、6歳の小さな男の子がその家族のために何時間もかけて毎日水を汲みに行き、自分の家庭における役割をこなすことから得た自信に満ちた笑顔・・・。日本の家族の中でお互いに感謝しあったり、尊敬しあっている瞬間はどのぐらいあるのだろうか?経済的価値感とは別の、お互いが信頼しあうという生活の“豊か度”とは?それまで自分の中にあった「このことはこうでなければならない感」が覆された体験を「見てきた者の使命として」多くの人に伝えたいと感じたとのことです。
そしてその20年後、病気と事故で入院生活を余儀なくされ、「人の命はどうなるか解らない。自分は夢をいくつかなえたのだろう?」との疑問を持ったことを契機に「やっていないことリスト」をつくり「今、自分に出来ることをやろう」と決意。歌手活動をしながらの「キャンパスライフ」もそんな流れから自然に始まりました。続く「ロンドン留学」では、それまで学校で学んでいた「ボランティア」についても実体験として捉えかたを知るようになります。「ボランティアは自分の意志で仕事をする気持ちの良いやり方。奉仕ではなく、自分の能力を、出来ることを提供すること。」
私に出来ることは何だろう?の問いに、「教会でのチャリティーコンサート」を思いつき、何かをやりたいと思っていた人たちに共感の輪が広がり輝きを発し実現できたという経験が、「セプテンバーコンサート(*)」そして「NPO国境なき楽団」の設立に繋がっていくこととなるのです。
(*注:セプテンバーコンサート・・・9月11日に起きたニューヨークでの事件をきっかけに2002年から始まった音楽ライブ。形にこだわらず、どんな場所でも自由に開催できて音楽を通してつながって行こうというイベント)
「自分は思いつきの連続の人生」と語る庄野さんの生き方は、まさに「思えばかなう」ことを教えてくれているように見えます。
講演はビデオ上映に移ります。これは「天使たちのララバイ」というタイトルで、「海を渡る風」と名づけられた「世界の子どもたちに楽器を届けよう」というプロジェクトの届け先になっているフィリピンの子どもたちの様子が紹介されています。ここに出てくる子どもたちは、親に捨てられた「ストリートチルドレン」。心が傷ついた子どもたちが共に暮らす施設でのインタビューです。「あなたの夢は?大人になったら何になりたい?」の問いに「警察官・判事・ナース・ドクター・・」、「私たちの国が平和になるように」、「他人の役に立ちたい」、「子どもたちを助けたい」と照れながら、でも真剣に答える子どもの姿に、聴衆は何を感じたでしょうか?何故、小さいうちから過酷で悲惨な生活環境にありながら心豊かに成長しているのか?その原因のひとつに、「歌」があるようです。施設のソーシャルワーカーが自作した歌。これをみんなで唄っているとのこと。歌詞の内容は「おなかがすいて苦しいよ・・ゴミくずのような子どもたち・・僕らの人生傷だらけ・・」つらい気持ちや言いたくない気持ちが歌詞になっていてそれを唄うことで現実と向き合える。心情をストレートに吐き出すことが病んだ心を救う。そんな療法をとりいれた効果が表れている訳です。音楽では、現実に空腹を満たすことは出来ないけれど、気持ちを助けることは出来る、人を変える力を持っている。今まで持っていたその確信が裏打ちされた効用を見て、庄野さんは、「この音楽の魔力を、多くの人に伝えたい」という想いを強くして、まず「この子どもたちのために楽器を送ろう。」と思い立ったのだそうです。明日の保証等ないけれど、今日を一生懸命生き、楽しいことが待っていると目を輝かせて暮らす彼らに、実は自分が励まされることもプロジェクトを続けていく大きな理由。この支援だけでは本当の解決にはならないことも承知で、お互いが影響しあうことが重要な要素だとのこと。漢字の“人”のデザインがそれをよく現わしているように“社会貢献・ボランティア”を“支えあう”と捉え活動しているとのことです。
そして最後に、「私たち一人ひとりの力は小さいけれど、微力だけれど無力ではない。微力がたくさん集まれば強力になる」「この講演会に参加した皆さんも、今日一歩を踏み出したのだから、共に歩んでいきましょう。」と締めくくられました。
「2、3曲歌を唄ったほうが余程、楽なのですが」と前置きされて語り始められたストーリーは、その笑顔と語り口からもとても心を揺さぶられるものでした。
続いてHAL(はる)さんが登場して第二部が始まりました。庄野さんが紹介した、楽器をおくるプロジェクト「海を渡る風」のリーダーを務めるHAL(はる)さんは滝野川在住で、区内で指導もされているゴスペル歌手です。「世界の子どもたちに音楽を」と題した講演は、真代さんの「本気さ」に打たれて、「出来るだろうか?」という不安な状態から「一緒にやろう!」と決断していくエピソードなどを交え、各地で展開されている楽器集めの様子や、それが届いた現地の様子がスライドショーで紹介されました。「“楽器の命が吹き返す”このボランティア活動を通じ、やり方、かかわり方には様々な方法があることに気づかされた。余分な楽器を持っていなくても、それを入れる袋を作ってくれたり、宣伝するチラシづくりをしたり、「輸送代の足しに」と募金してくれたり・・・「温かい気持ちの連鎖が生まれるとはこういうことなのだと実感した。」と語るHAL(はる)さん。「ぜひ北区にも支部をつくりませんか!?」と呼びかけ、そのパワフルな声量で、「祈り」というオリジナルソングを披露してくださいました。
そしていよいよフィナーレに進みます。会場に来ていた「ゴスペルママ」、「ゴスペルこっころ」の皆さんが舞台に集まり、会場全体で『YOU CAN 〜愛の国』の大合唱。
会場のすべての人の気持ちが温かくなり、元気になった、そんな講演会でした。
最後に、庄野さんは「帰ったら5人に、今日ここに参加したことを話してください」と希望されましたが、それはもっと大きな広がりにつながっていったことと思います。音楽の魔力・・・「音楽でこの地球を守りたい」というテーマがとても深く心に残りました。
(取材:KiVo広報部 富田好明)
※講演会の様子が4月13日(日)北ケーブルテレビで放映されます。(10時〜 ・ 20時〜)
ご覧下さい。
★北区を中心とした市民活動の情報を提供する『みにきたWeb』(下記HPアドレス)を、皆さんも是非一度、ご覧になってください!
(HPアドレス:http://minikita.kitaku.net/ )
2008年2月29日更新版
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